承啓楼
中国で最も有名な大型土楼。承啓楼は、直径61mの円楼で、外環部が4階建て、内部は円形の祖堂を中心に2層の平屋棟が連なる、四重の同心円で形成されています。
田螺坑土楼群は山の中腹に位置していたのに対し、承啓楼は比較的平坦な住宅地の中に佇んでいます。それぞれ全く異なる形状・スケール感であるにも関わらず、連続する風景として成立しているのは、やはり外壁に同一素材が用いているからでしょうか。
土楼は地場産材を用いた版築造で生土を押し固めた版築等による組積造と木材による軸組造から成っており、外周壁が版築造で、屋根や内側を丸太による木造で作られています。屋根の軒の出が深いのは、生土を風雨から守るためと文献で書かれていますが、それにしても約3mの軒の出は、別の理由がありそうな気がしてなりません。

基礎廻りの荷重がかかり傷みやすい部分は石積みで行っている。さらに基壇(約800mm)の上に設けることで、水害等を防ぐ役割も果たしているのでしょう。また基壇際から約1600mmセットバックした所から外壁が立ち上がっているのは、通行や農作業(野菜の乾燥場)等を考慮しているためでしょうか。
また外壁幅を実測してみると、基礎周辺で約1000mmあることから、相当の荷重がかかっていることが想像できますね。

基礎周辺の外壁パターン。W250×H150の生土ブロック。やや表面の風化が見られます。奥行寸法は不明ですが、上記の実測より外壁断面=1000mm近くあることから、ブロックを幾重にも重ねて厚い壁を構成していると思われます。
円楼全体の荷重を受け流すのは勿論のこと、生土を用いるので風化による表面の劣化を考慮して、外壁断面寸法が決まっていたのではないでしょうか。

ここで土楼の大きな特徴の一つである版築造について説明しておきます。
左図は、版築造の移動式型枠。外壁を作っていくときに用いる道具で、ヒバ等の堅い木でつくります。作る部分に合わせて型枠が移動していくという、現代ではあまりお見受けしない型枠ですね。
①まず枠の中に生土を入れて中に補強材として、竹、葦、熊笹等を入れていきます。(セメントに砂を混ぜ込んで強度を持たせるのと似ていますね。)さらに外壁を積み上げていくときに竹筋を入れて補強しています。(鉄筋のような役割を果たしているのでしょう)
②生土が十分固まったら道具を取り、同じ作業を繰り返して長方形の外壁を繋げて円に近づけていき、完成!
方法は単純ですが、一つ一つ手作業であること、また天候に大きく左右されることを考えると気の遠くなるような時間と労力が必要だったことでしょう。
<承啓楼データ>
